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PDF対話フォームとはなにか? 申請のデジタル化にPDF対話フォームの活用を期待する

更新日: 2021/5/12

PDFドキュメントには、ユーザがPCなどの画面上でPDFを表示しながら対話的にデータを入力するエリア(フィールドという)を設定できます。対話的に情報を入力できるフィールドの集まりのことをPDF規格の用語では対話フォーム(Interactive Forms)と呼びます。対話フォームはAcroFormと呼ばれることもあります。対話フォームを設定したPDFファイルのことを、業界用語でPDFフォームと呼ぶことが多いようです [1]。但し、PDFフォームというと、PDF形式の帳票を思い浮かべることも多く、誤解を招きやすいようです。PDF対話フォームと呼ぶ方が良いでしょう。

対話フォームの種類

対話フォームのフィールドには次の種類があります。

  • ボタンフィールドはユーザがマウスで操作できるスクリーン上の対話的な制御を表現する。ボタンは次の3種類を使える。
    • プッシュボタン
    • チェックボックス
    • ラジオボタン
  • テキストフィールドはユーザがキーボードからテキストを入力することができるボックスあるいはスペース。
    • テキストボックスの属性を様々に設定できる。例えば、一行のみのボックスや複数行のボックスを設定。スクロールの許可・禁止の設定、桁割など。
  • 選択フィールドは最大1つがそのフィールドの値として選択されることができるいくつかのテキスト項目を持つ。次の2種類を使える。
    • スクロール可能なリストボックス
    • ユーザが項目を入力可能なコンボボックス
  • 署名フィールドは電子署名を付加するための特別な領域。ユーザのIDやドキュメントのコンテントの有効性を認証するための電子署名とオプションのデータを表現する。

なお、フォームのフィールドを静的な状態に変換した非対話フォームも規定されています。非対話フォームはPDF1.7で導入されたもので入力域を静的なコンテントとして表すことで、例えばPDFを印刷して手書きで入力するためのものです。次に述べるフォームの重要な機能がないので、本解説では特に触れません。一つのPDFドキュメントには、対話フォームと非対話フォームの両方を含むことができます。

PDF対話フォームをサポートする製品

PDF対話フォームは、PDF国際規格ISO 32000 [2] で規定されていますので、非常に多くのPDFソフトウェアがPDF対話フォーム作成などの関連機能を提供しています。アンテナハウス製品については、「関連製品」を参照してください。

対話フォームへの情報入力

Adobe Readerを使うとPDF対話フォームを表示して、テキストフィールドに文字を入力したり、あらかじめ用意したリストボックスを選択などができます。Adobe Readerで入力した結果をPDFファイルとして保存できます(次の図)。

国税庁が配布している個人事業の開業・廃業等届出書にAdobe Readerで記入した例
図 国税庁が配布している個人事業の開業・廃業等届出書にAdobe Readerで記入した例

現在は、代表的なブラウザは自前のPDFリーダーを備えていますが、ブラウザのPDFリーダーでも対話フォームに入力ができるようになりつつあります。例えば、FireFoxのPDFリーダーは、2020年9月にリリースしたForeFox81から対話フォームへの入力をサポートしています [3]。一方、ChromeのPDFリーダーは対話フォームに情報を入力できないようです [4]

Adobe Readerのような対話フォームをサポートするソフトウェアのことを専門用語では対話PDFプロセッサといいます。対話PDFプロセッサの代表的なものはPDFリーダーですが、サーバーで動く対話型プロセッサも考えられます。

対話フォームでデータ収集

対話フォームの各フィールドには、様々な機能を設定できます。特に、大きな意味があるのはアクションを設定できることです。アクションにはPDFの標準的なアクションと対話フォーム専用のアクションがあります。

ECMAscript

フォームフィールドに設定して有益なPDFの標準アクションとしては、ECMAscriptアクションがあります。例えば、数値が入力されたときに計算式を実行するプログラムを設定しておくことで、計算結果を表示できます。また、フィールド毎に入力上の注意や入力された値の範囲を確認するスクリプトを設定しておくこともできるでしょう。但し、ECMAscriptが使えないPDFリーダーでは、設定が無効になってしまうので注意が必要です。

対話フォーム専用アクション

フォームフィールド専用のアクションとして次があります。

  • サブミットフォームアクションは、対話PDFプロセッサに指定された対話フォームフィールドの名前と値を指定されたURLに送信します。フォームフィールドのうち送信するものと送信から除外するものを指定できます。また、送信するときのフォーマットを指定できます。
  • リセットフォームアクションは、対話PDFプロセッサは選択された対話フォームフィールドをデフォルト値にリセットします。
  • インポートデータアクションは、インポート元に指定したファイルからデータをインポートします。

対話フォームの送信形式

サブミットアクションで対話フォームの内容を送信するときのデータ形式は、アクションに設定されているフラグの状態により、次の形式が選択されます。

  • HTML のForm 形式で送信 (HTML 4.01 )
  • Forms Data Format (FDF)で送信:FDFは主にフォームデータの送受信につかうためのシンプルな疑似的PDF形式です。
  • XFDF:FDFのISO 19444-1:2016に定義されるXMLにもとづく版である。
  • PDF:この場合、個々のフィールドの値ではなく、PDFドキュメント全体が送信される。

PDF対話フォームの将来を考える

特別なアプリケーションがなくてもPDFリーダーで対話フォームに情報を入力できることから、PDF対話フォームは申請書などをPDF形式で作成して配布し、利用者がそこに記入した情報を収集する手段として使うのに向いています。そこで、官公庁・行政や公共団体に提出する申請書などをデジタル化する用途には大きな可能性があります。しかし、実態を調べると、現在、日本で配布されているPDFファイルで、PDF対話フォームが設定されているものはごくわずかです。

また、まれにPDF対話フォームが設定されていても、受付の手続きとして記入済みPDFファイルを印刷、捺印して書面で提出するようになっているケースが多いようです。このような使い方では、PDF対話フォームを画面でPDFファイルに情報を書き込むための手段としてのみ想定しており、記入された情報を収集する段階がデジタル化されていないことになります。

PDF対話フォームは、対話フォームを使って記入内容をサブミットしてもらい、サブミットされた情報を受信して管理する仕組みまでセットでデジタル化を考えないと折角の機能が死んでしまうと考えられます。PDF対話フォームを活用するには、情報収集側の仕組みが重要です。


参考資料

関連製品

アンテナハウス製品のPDF対話フォーム関連機能を紹介します。

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