PDF/Xについて (2) PDF/X-3

最終更新日: 2007/4/25

目次

改訂履歴

改訂日 改訂内容
2007年4月25日 16.電子署名の項。PDF/X-3:2003では電子署名に関する記述が削除されていることを追記。

はじめに

ここでは、PDF/Xファミリーの中でPDF/X-3についてまとめてみます。

PDF/X-3:2002とPDF/X-3:2003

PDF/X-3は、カラー管理ワークフロー用に適した完全交換という副題が付いています。

2002年版と2003年版があり、それぞれ次の仕様書で規定されます。
ISO 15930-3 PDF/X-3:2002 PDF Reference 1.3 ベース
ISO 15930-6 PDF/X-3:2003 PDF Reference 1.4 ベース

この二つの仕様の違いは準拠するPDF Referenceが1.3と1.4のどちららになるかということのみです。具体的には主に次の点が違います。

準拠ファイルとツール
PDF/X-3の仕様に準拠するファイルとは、PDFファイルであってISOの各仕様書に準拠するものです。準拠するファイルには、印刷に関係ないPDFの他の機能を含むことが許されます。

PDF/X-3に準拠する書き手(ライター)はISOの各仕様に準拠するファイルを書くことができなければなりません。一方、読み手は、各仕様に準拠するすべてのPDF/X-3ファイルを読むことができなければなりません。さらに、PDF/X-1a:2001、PDF/X-1a:2003も処理できなけれなりません。

PDF/X-1aは、PDF/X-3の下位規定になりますので、PDF/X-3のリーダは、PDF/X-1aも読めないといけないわけです。

完全交換
PDF/X-3は、PDF/X-1aと同様完全交換の規定です。従って、複合実体のすべての部品がPDF/X-3のファイルに含まれていなければなりません。

PDF/X-1aとPDF/X-3

上に出てきましたように、PDF/X-3は、PDF/X-1aの拡張仕様となっています。具体的には、使えるカラー空間がPDF/X-1aではCMYKと特色などに制限されていました。これに対して、PDF/X-3ではRGBやICCBasedカラーなどの使用が可能になっています。カラー管理ワークフロー用という副題がある通りです。

PDF/X-3仕様の概要

次にISO 15930-3、ISO 15930-6仕様書をざっと調べてみます。以下では、PDF/X-1aと違う部分のみを主に説明します。

1. PDF/X-3 ファイル構造

PDF/X-3 のファイル構造はPDF/X-1aと同じです。PDF/X-1aについての説明はこちらをご覧ください。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 1. PDF/X-1aファイル構造

2. カラー空間

PDF/X-3:2002、PDF/X-3:2003では、出力デバイスのコード値でカラーを交換したり、測色計で定義したデータでカラーを交換できます。

いづれにせよ、印刷条件を事前に、名前付きの条件またはICC出力プロファイルの形で用意しておかねばなりません。

測色計で定義したデータを記述するには、PDFのICCBasedカラー空間のICCプロファイルを使うか、または、CalGrayCalRBGLabカラー空間の同等の仕組みを使います。

出力デバイスのコード値は、PDFでは、DeviceRGBDeviceCMYKDeviceGraySeparationDeviceNIndexedPatternカラー空間を、これから述べるような制約の元で使用できます。

2.1 出力インテント

出力インテントについては、PDF/X-1aに対して、次の条件が追加になっています。

印刷要素にデバイス独立のカラー空間を使用しているとき、DestOutputProfileキーが存在しなければならない。

PDF/X-1aについては、PDF/Xについて (1) PDF/X-1aの 2.1 OutputIntentによるカラー印刷特性の識別の記事を参照してください。

2.2 デバイス依存カラー

DeviceCMYKは、印刷条件がDeviceCMYKで指定されている時は、PDF/Xの出力インテントで識別される印刷条件で解釈しなければなりません。

これに対して、PDF/X-3のファイルにDeviceCMYKで定義されるカラーが含まれているにも関わらず、指定印刷条件がCMYKでないならば、Resource辞書のColorSpace下位辞書にDefaultCMYKカラー空間を含めなければなりません。そして、それは測色計によるカラー定義を提供しなければなりません。

DeviceGrayは、印刷条件がCMYKで指定されている場合、その黒色成分とみなします。印刷条件がグレーで指定されるときは、PDF/Xの出力インテントで識別される印刷条件で解釈しなければなりません。

DeviceGrayで定義されるカラーデータを含んでいるにも関わらず、指定印刷条件がCYMKでもグレーでもない場合は、Resource辞書のColorSpace下位辞書にDefaultGrayカラー空間を含めなければなりません。そして、それは測色計によるカラー定義を提供しなければなりません。

DeviceRGBも、DeviceCMYK、DeviceGrayと同様です。

2.3 ICCBasedカラー空間

ICCBasedカラー空間やその他の既定値のStream辞書では、Alternate(代替)カラー空間を含むことができません。

2.4 Separation, DeviceNカラー空間

CMYKカラー、スポットカラーにはSearationまたはDeviceNカラー空間を使うことができます。

PDF/X-3におけるSeparation, DeviceNカラー空間の仕様は、PDF/X-1aにおける同様の仕様を2.2項の記述に沿って拡張したものとなっています。

すなわち、送り手と受け手が、別の約束をしていない限り、名前をつけた色素は、意図した出力デバイスで使える独立した色素でなければなりません。

SeparationまたはDeviceNカラー空間で指定したスポットカラーをプロセスカラー色素を使って印刷するときは、SeparationまたはDeviceNカラー空間の代替カラー空間と色調変換式を使います。

代替カラー空間が、PDF/Xの出力インテントと同じデバイス依存カラーの場合、PDF/X-3準拠のリーダは、代替カラー空間をその印刷条件を参照するものとして扱います。また、代替カラー空間がDeviceGrayの場合は、PDF/X出力インテントで識別されるCMYKの黒と同等に処理します。代替カラー空間が、印刷条件と対応しないデバイス依存カラー空間を使っている場合は、2.2項を適用します。

2.5 Indexed、Patternカラー空間

IndexedPatternカラー空間の基底となるカラー空間についても、上記の2.2項を適用します。

3. フォント

PDF/X-3では、フォントのグリフ、メトリックス、符号化方法は、使用されているすべての文字について埋め込まれていなければなりません。

フォントは埋め込みを許可されたもののみを埋め込みできますので、埋め込みが許可されていないフォントをPDF/X-3で使うことはできません。

4. ファイル指定

PDFでは、ファイル指定機能によって、他のファイルの内容を参照することができます。PDF/X-3ではファイル指定機能を使うことは禁止事項です。

参考 PDF Reference Fifth Edition 3.1 File Specifications pp. 151 - 162

5. データ圧縮

PDF/X-3:2002では、LZW以外のPDF1.3で使える圧縮を使用できます。
PDF/X-3:2003では、LZWとJBIG2以外のPDF1.4で使える圧縮を使用できます。

6. トラッピング

PDF/X-3のトラッピングについての仕様は、PDF/X-1aとカラー空間を示すPCMの規定を除いてまったく同じです。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 5.トラッピングを参照してください。

すなわち、PDF/X-1aでは、PCMキーの値は、DeviceCMYKのみが許されていましたが、PDF/X-3では、PCMキーの値は、PDF/Xの出力インテントで指定した印刷条件に一致していなければならないというように拡張されています。

7. PDF/X-3ファイルの識別

PDF/X-3のファイルは、Info辞書のGTS_PDF/XVersionキーで識別します。
PDF/X-3:2002ではキーの値が、(PDF/X-3:2002)となります。
PDF/X-3:2003ではキーの値が、(PDF/X-3:2003)となります。

PDF/X-1a の文書情報辞書の一般項目の設定は、PDF/X-1aと同じです。

8. 境界ボックス

PDF/X-3の境界ボックスに対する条件は、PDF/X-1aとまったく同じです。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 7.境界ボックス
を参照してください。

9. 拡張グラフィックス状態

PDF/X-3の拡張グラフィックス状態に関する制約もPDF/X-1aとまったく同じです。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 8.拡張グラフィックス状態
を参照してください。

10. PostScript XObject

PDF/X-3ではPostScript XObjectを使うことはできません。この制約もPDF/X-1aとまったく同じです。

11. 暗号化辞書

PDF/X-3では、暗号化辞書を使うことはできません。PDF/X-1aと同じです。

12. 代替イメージ

PDF/X-3の代替イメージに関する制約もPDF/X-1aとまったく同じです。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 11.代替イメージ
を参照してください。

13. 注釈

PDF/X-3のトラッピング以外の注釈は、完全にBleedBox(もし、BleedBoxが無い時は、TrimBoxまたはArtBox)の外側になければなりません。PDF/X-1aと同じです。

14. アクション、JAVAScript

PDF/X-3では、アクションやJAVAScriptを使うことができません。PDF/X-1aと同じです。

15. BX/EXオペレータの使用

BX/EXオペレータの使用に関する制約は、PDF/X-1aと同じです。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 14.BX/EXオペレータの使用を参照してください。

16. デジタル署名

PDF/X-3:2002は、デジタル署名を含むことができます。PDF/X-3のリーダはデジタル署名を無視してもかまいません。

PDF/X-3:2003では、デジタル署名に関する規定は削除されています。

17. 透明

PDF 1.4から追加された透明は、PDF/X-3:2003で使用条件に制約が課されています。この制約は、PDF/X-1a:2003と同じです。

PDF/Xについて (1) PDF/X-1a 15.透明を参照してください。


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