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見積書、注文書、請求書、領収書をPDFとして作成し、Webダウンロード配信や電子メールによる送受信をしたときの保存義務について

更新日: 2021/3/31

見積書、注文書、請求書、領収書のような取引書類については、従来は書面で作成して捺印・送付するのが主流でした。しかし、最近は、PDFとして作成(以下、この4つの書類のPDF版をまとめて取引用PDFファイルといいます)、電子メールの添付ファイルとして送受信するのが一般的になっています。また、例えば、アマゾンのようなECショップでは購入した物品の領収書や請求書をPDFファイルとして作成し、ダウンロードできます。アンテナハウスのオンラインショップも、最近、見積書PDF作成機能を用意しました。このように取引用PDFファイルをWebサイトからダウンロードして配信するECサイトが増えています。

特に2020年は新型コロナウィルス感染リスクを避けるために、テレワークの採用が進んでいます。今年4月の緊急事態宣言時にテレワークの推進が叫ばれた際には、捺印のために出社しなければならない問題が指摘されて、電子印鑑がブームになりました。こうして、新型コロナウィルスは、インターネットなどを介して取引用PDFファイルを交換する動きに拍車をかけています。

この記事では、こうして交換した取引用PDFファイルの国税納税者としての保存義務について考察してみます。

国税納税者の取引書類保存義務

顧客や取引先との取引書類は営業上の重要な証憑書類の一種であり、取引で問題が発生したときの対処のより所となります。さらに企業の会計・経理では、売上計算や経費支払いの裏付け書類となり、ひいては各企業の損益と納税額にも関連しています。国税庁は、法人税・所得税などの国税の徴収を行う立場から、見積書、注文書、請求書、領収書などを国税関係書類として指定しており、取引に際して相手方から受け取った国税関係書類と相手方に渡した国税関係書類の写しの保存を納税者に義務付けています。

国税関係書類の保存を義務付けている大元は法人税法です。法人税法第第百五十条の二第一項(帳簿書類の備付け等)に国税関係書類の保存義務が次のように規定されています。

普通法人、協同組合等並びに収益事業を行う公益法人等及び人格のない社団等は、財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその取引を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿(当該取引に関して作成し、又は受領した書類及び決算に関して作成した書類で財務省令で定めるものを含む。)を保存しなければならない。(ただし、引用にあたり一部を省略)

財務省の法人税法施行規則の第67条で帳簿書類の整理保存等について次のように規定しています。

「第六十七条 法第百五十条の二第一項(帳簿書類の備付け等)に規定する財務省令で定める書類は、次に掲げる書類とする

  • 一 前条第一項に規定する取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」

これらの法律は書類が書面として作成されていることを大前提としています。それは、「写し」という用語が用いられていることからもわかります。法律を制定した時点では、取引用PDFファイルのようなデジタル書類は想定外だったわけで、取引用PDFファイルは国税関係書類にはあたらず、法人税法での保存義務はないと考えられます。

国税関係書類のデジタル保存について

国税関係書類のデジタル保存については、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(「電子帳簿保存法」といいます)で特例として定められています。また財務省令「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」(以下、「施行規則」といいます)が定められています(参考資料1)。

取引用PDFファイルの第4条による保存について

電子帳簿保存法は第4条によって、国税関係書類を出力できるデジタルデータの保存について規定しています。電子帳簿保存法第4条1項は、会計システムなどを使って自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成している「帳簿」が対象です。第4条2項は自己が一貫してコンピュータを使用して作成している「国税関係書類」が対象です。第4条3項で書面をスキャンして電子化PDFファイルとしたときのデジタル保存と原本廃棄を認める(スキャナ保存といいます)条件について定めています。では、取引用PDFファイルが第4条2項による保存の対象になるかどうか検討してみましょう。

(1) 取引用PDFファイルを作成して送信したとき

たとえば、Microsoft Wordで請求書を作成し、それをPDFファイルとして用意して、PDFのままの状態で捺印処理して、取引先に電子的に送付したとします。このとき、(PDFファイルから書面にプリントアウトしなければ)、(国税関係書類である書面の)請求書は手元には存在せず、むろんその写しも存在しません。従って、この取引用PDFファイルは、電子帳簿保存法第4条2項の考慮外になるはずです。

ただし、注意すべきパターンがいくつかありそうです。従来、例えばMicrosoft Wordで請求書を作成し、それをPDFファイルとして用意して取引先に電子的に送付するとともに、請求書をプリントアウトして書面の控えとして保存していた場合は、書面の写しの保存からデジタル保存への切り替えとなるため、第4条2項の対象になります。

なお、Microsoft Wordで請求書を作成し、一旦、プリントアウトして書面として、そこにアナログの捺印を行ったのち、スキャナで読み取って電子化して作成したPDFを取引先に送付した場合は、自己が一貫してコンピュータで作成したPDFにはなりません。この場合は、書面の控えが第4条3項スキャナ保存の対象になります。

(2) 取引用PDFファイルを受け取ったとき

電子メールで受け取った取引用PDFファイルやWebサイトからダウンロードした取引用PDFファイルは取引先が作成したものなので、受け取った側について自己が一貫してコンピュータを使用して作成していることになりません。従って、これらの取引用PDFファイルのデジタル保存は第4条2項で考慮する対象にはならないでしょう。実際に、「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」を見ますと、受領した書類は、第4条2項の対象にされていません。

このように電子帳簿保存法の中核である第4条2項では自己がコンピュータで取引用PDFファイルを作成して、それをデジタルのまま取引先に送信するとそのPDFファイルは考慮の対象外となり、一方、受信したPDFファイルも考慮の対象外です。以上により、取引用PDFファイルは、電子帳簿保存法第4条の対象外と考えられます。

取引用PDFファイルは電子帳簿保存法第10条で保存義務がある

このままでは、取引用PDFファイルは保存義務の対象外となるわけですが、それを避けるために、次に示すように電子帳簿保存法第10条で、法人税・所得税の保存義務者が電子取引を行った場合、その取引情報を保存しなければならないと定めています。

第十条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。

第10条はこれまであまり注目されていなかったようですが、取引用PDFファイルの重要性が増したためか注目度が高くなっています。国税庁は2020年7月に「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(参考資料2)を新しく公開しました。これを見ると、電子取引用PDFファイルを作成し、そのPDFファイルを電子メールの添付ファイルとして送受して受発注関係業務を行ったり、Web経由でダウンロードした場合は電子取引に該当し、取引用PDFファイルを保存しなければならないことが明確にされています。

第10条については、施行規則第8条においてより詳しい保存要件を定めており、取引用PDFファイルを書面にプリントアウトして保存するか、デジタル保存しなければなりません。折角のデジタルファイルを書面で保存するのでは時代の流れに逆行するので、普通は、デジタルファイルで保存したいと考えるでしょう。そうすると次の条件を満たす必要があります。

  1. デジタルファイルの受け渡し後、時間をおかずに記録事項にタイムスタンプを押し、さらに保存担当者またはその監督者の情報を確認できるようにする。
  2. 正当な理由なく訂正及び削除を防止する事務処理規定を設けて備え付け、規定に沿った運用を行う。
  3. デジタルファイルの記録事項にタイムスタンプを付してから、取引情報の授受を行う。
  4. デジタルファイルの記録事項について、訂正または削除を行ったばあいにこれらの事実及び内容を確認することができるコンピュータシステムまたは訂正もしくは削除を行うことができないコンピュータシステムを使用して、その取引情報の授受及びそのデジタルファイルの保存を行うこと。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】には、上記1~4のいずれかの措置を行えば良いとされています。

電子取引用PDFファイル保存の検索要件

施行規則第8条ではさらに保存した取引用PDFファイルを検索できるようにしておくことを求めています。検索では、①取引年月日、その他の日付、取引金額その他の主な記録項目を検索条件として検索できること、②日付と金額については範囲を指定して条件設定できること、③二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できることが必要です。

電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】では、検索の要件について、特に、「対象となるデータを検索できる状態で保存する要件を満たすためには、PDFファイルを電子メールの添付ファイルとしている場合、メールソフト上で閲覧できるだけでは十分とはいえない。」とされていますので、何らかのデータ管理システムを使う必要があります。

なお、書面による保存とデジタル保存の両方を混在させられますが無秩序な混在は認められません。一定の規則に従って継続的に使い分けなければならないとされています。また、取引用PDFファイルのほかに、書面を受け取っているときは書面を保存しなければなりません。

令和3年度(2021年度)度税制改正で電子取引データの書面保存は廃止

2020年12月21日に令和3年度税制改正の大綱が閣議決定されました。財務省のWebページに掲載されている概要(参考資料3)を見ると、電子取引データの保存について次の要件緩和が予定されています。

  • タイムスタンプ要件緩和:タイムスタンプ付与期間(現行:3日以内)を記録事項の入力期間(最長約2月以内)と同様とする。
  • 検索要件緩和:検索項目を取引等の年月日、取引金額及び取引先に限定するとともに、保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることとする場合にあっては、範囲指定及び項目を組み合わせて設定できる機能の確保を不要とする。このほか、売上高1000万円以下で、保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じるなら検索要件は不要とする。

この要件緩和に加えて「適正な保存を担保するための措置」として次の項目があります。

申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務者が行う当該電磁的記録の出力書面等の保存をもって当該電磁的記録に代えることができる措置は、廃止する。

この税制改正大綱に従って、1月26日に「所得税法等の一部を改正する法律案」の一部として「電子帳簿保存法」の一部改正が提出されました(参考資料4)。これによると現在の第10条の内容は次のように変更されます

(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
第十条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

第十条の、ただし書きを削除。

電子取引データ保存への対応が必要に

本法案は3月26日に国会で可決・成立しました(参考資料5)。新しい電子帳簿保存法の適用は令和4年1月1日となっています(参考資料6)。納税義務者は、電子取引データをPDFなどでやりとりした場合の電子的な保管のシステムを今年中に整備する必要があります。

関連情報

参考資料

【ご注意】本記事の内容は、ひとつの考え方として読者の参考のために公開するものであり、国税庁のお墨付きを得たものではありません。書類の保存に関しては政府・地方自治体による各種の規制があります。こうした規制の原点は法律であり、さらに所轄の役所による法令や取り扱い規則を定めています。この記事の内容は2021年3月時点で整理したものですが、対象となる法律・法令は規制緩和などで変更されることに注意してください。

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