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「PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。」表記は必要なのでしょうか?

更新日: 2021/2/4

官公庁、地方自治体をはじめ民間企業のWebサイトから申請、登録用紙、レポート、報告書などの多様な書類がPDFファイルとして配布されています。

こうしたサイトに、「PDFを表示するにはAdobe Readerが必要です。」という告知を見かけることがあります。特に行政の関連サイトではこのような表記が目立つようです。

例えば、東京法務局のサイト(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki2.html)には次のような掲示があります。(2021年2月3日現在)

文章の例)「PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。

Adobe Readerをお持ちでない方は、以下のページからダウンロードしてください。リンク先のサイトはAdobe Systems社が運営しています。Adobe Reader ダウンロードページ

※上記プラグインダウンロードのリンク先は2015年3月時点のものです。」

このような掲示は必要なのかどうか、どのような意味があるかを考えてみましょう。

  1. PDFが登場した1990年代であれば、PDFファイルを表示する方法が分からない人がいたかもしれません。現在でも毎年一定の人口がPDFファイルのユーザーとして新規参入します。そういう初めての人たちにPDFファイルを表示する方法を告知するのは、もしかすると意味があるかもしれません。告知するとして、1990年代であればAdobe ReaderがPDFファイルを表示するための、実質的に唯一の選択肢であったかもしれません。
  2. 現在では、Adobe Reader以外にもPDFを表示するアプリケーションが増えています。さらに、Chrome、Edge、FireFoxなど主要なブラウザはPDFをファイルを表示するリーダーを備えています。これらのリーダーはWebページの表示とPDFファイルの表示をシームレスに切り替えできて便利です。最近ではWebページにリンクしたPDFファイルを手元のPCにダウンロードして保存することも減っています。こうして、現在、WebページのPDF表示では、Adobe Readerよりもむしろブラウザ内蔵のPDFリーダーを使うケースの方が多くなっているのではないでしょうか。このように、PDFファイルはAdobe Readerで表示するという考え自体が、時代遅れの思い込みになりつつあります。
    WebブラウザでPDFを表示(Firefox例)
  3. 以前はAdobe Readerは純粋にPDFファイルを表示する役割のみでした。ところが、最近は、Adobe Readerはアドビの有償サービスの強力な販促手段になっています。Adobe ReaderでPDFファイルを表示し、そのPDFファイルを編集したり、変換しようとするとアドビの有償サービスの契約ページに知らないうちに誘導されるようになっています。Webサイトで、Adobe Readerのダウンロードを推奨することは、アドビの営業活動への暗黙の協力となってしまいます。特に、官公庁のWebサイトで、米国企業が行っている有償サービスの勧誘の入り口として使われている状態は公平性という観点でも好ましくないと考えられます。
  4. 2000年代まではPDFファイルの表示はアドビの知財戦略により許諾された利用権に基づいていました。2008年にPDF仕様はISO 32000-1:2008(PDF 1.7)として標準化され、その後ISO 32000-2:2017(PDF 2.0)、ISO 32000-2:2020と進化しています。ISO 32000-2:2020の詳細はISO の技術委員会が策定しており、アドビが支配するところではなくなっています。また、米国・日本での特許の有効期限は20年間ですが、すでにPDFが発明されてから20年をはるかに超えており、PDFに関するアドビの基本的な特許は期限切れとなっています。このように、現時点で基本的なPDFファイルを表示するのにアドビの知財は不要となっていますので、アドビに遠慮する必要はまったくありません。

このように考えますと、「PDFを表示するにはAdobe Readerが必要です。」という告知は、もはや時代にそぐわなくなっていると考えられます。また、PDFファイルの表示は、特に、アクセシビリティ、PDFのリフロー表示などでは進化させるべき余地もあることを鑑みると、Adobe Reader一択で推奨するのをやめて、より多くのベンダーに競わせることで進化を期待するのが良いのではないでしょうか。

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