トップページ > CAS-UB トップ > CAS-UB EPUB関連情報 > EPUBと電子書籍の最近の動き(2011年10月)
第3回CAS-UB紹介セミナーでお話しました内容を中心に、「EPUBをめぐる状況」の内容を紹介します。但し、一部その後の状況を追加しています。
EPUBの仕様を策定していたIDPFは、2011年10月10日EPUB3.0の仕様が確定したことを公告した。
EPUB3.0の仕様は確定したので今後は実装にゆだねられることになる。しかし、2010年5月からの短期間で仕上げたものであり、また、参照しているHTML5やCSS3の仕様はまだ確定していないこと、特に今回追加された機能が膨大なものであることから実装がなかなか追いついていないのが現状である。
10月25日に台北において「EPUB固定レイアウトワークショップ」が開催された。
アップルのiBooks、バーンズ&ノーブルのNookなどはそれぞれ独自の固定レイアウト形式を進めており、このままでは電子書籍の固定レイアウト形式はばらばらに進んでしまうことから、標準化への要求は高い。
アップルは10月13日よりiOS5アップデートの配布を開始した。
iOS5に更新することでiBooksも新しくすることができる。iBooksの新バージョンではCSS3で縦書き指定したEPUBファイルを縦書きで表示することができる。しかし、改頁した直後の先頭ページしか正しく表示できない。ページネーションの方向が正しく処理されていないためと思われる。現時点では残念ながら、EPUB3で作成した日本語の縦書き書籍を読むことができない。
アマゾンは9月末にKindleのAndroid OS版「Kindle Fire」を発売した。出荷は11月中旬からであるが、Kindle Fireは7インチ(1024×600ドット)液晶タブレットでありながら199ドルと破格の安値で販売する。コンテンツの販売端末として位置づけであるからこそ実現できる低価格である。
AmazonはKindle Fireで、新しい電子書籍の形式としてHTML5に基づくKindle Format 8 (KF8)も採用した。KF8で従来のMobi形式を置き換えることになる。
なお、アマゾンは、近々日本で電子書籍の販売を開始する計画で、日本の大手出版社との交渉を進めている。交渉の過程で、契約内容に関する情報が漏洩されており、さまざまな反響を呼んでいる。
グーグルはGoogle eBookstoreを2010年末から米国で開始している。eBookstoreはPDF中心だが、EPUB形式も扱っている。日本ではGoogle eBookstoreを利用することはできない。日本でも開店を準備しているようだが。
日本では電子書籍の形式としてのEPUB3の採用はまだまだ鈍い。その原因としてはEPUB3をある程度高い精度で表示できるリーダがまだ一般的になっていないことが一番大きいであろう。しかし、大手の販売業者がEPUB3を本格的に採用する動きがでてきた。
ソニーのReader StoreではEPUB3コンテンツを取り扱いはじめた。 コンテンツは画像のようだ。
Yahooは11月1日より新しい電子書籍サービス「Yahoo! ブックストア」を開始する予定である。EPUB形式を中核にしており、コミック以外にも小説なども対象にする。
株式会社ACCESSは10月12日EPUB 対応の電子書籍ビューワ「NetFrontR BookReader v1.0 EPUB Edition」を発表した。EPUB3.0に対応する初のAndroid用のEPUBリーダとされている。
同社は、EPUBの作成、EPUB配信を含めたトータルソリューションを出版社向けに提供するビジネスを展開するようだ。
EPUB3はテキスト等のコンテンツ表現に最新のWeb技術を採用しており、日本の従来の電子書籍と比べて各段に自由度が高い。このためEPUB3でコンテンツをどのように表現したら良いかの指針が必要である。これに関連して2つの団体からEPUB作成ガイドが発表された。
いずれも未完成であるし、未成熟な段階であまり制約をつけることは発展を阻害するリスクがあるので、採用にあたっては注意が必要である。
イースト株式会社は10月13日に「JBasicマークアップ指針」を発表した。
文庫、新書、一般書など、日本語縦書きの普通の書籍を記述するための指針とされている。
コミックなどの固定されたページレイアウトが重要性を持つ出版物、また、音声、ビデオ、JavaScriptなどの利用も現時点では想定されていない。
0.7版はXHTML5ベースのマークアップになっていないが、次バージョンでHTML5ベースにするよう改訂が行なわれている。
社団法人デジタルメディア協会が10月14日の「本気でやるの?EPUB3 セミナー: 実践から考える」セミナーにおいて、株式会社インフォシティと株式会社ボイジャーは「EPUB3における日本語電子書籍ベーシック基準」を発表した。