"Arabic Typography"ノート
2004/1/25
Tokushige Kobayashi
アラビア語のタイポグラフィに関する次の書籍についてのメモである。
Huda Smitshujizen AbiFares: Arabic Typography a comprehensive sourcebook (London: Saqi Books, 2001)
Introduction(はじめに)
アラビア文字は筆記体で書く性質上、カリグラフィとタイプグラフィの相違を明確に認識しておかねばならない。一般にはカリグラフィは美しく流麗な手書きのこと、タイポグラフィは植字、印刷した文字の形態、配置、外観のことである。この本では、手書きと機械による生産物で分類する。(p. 14)
アラビア語のタイポグラファは数が少なく、独立して働いており、無視されがちで停滞している。手工業と技術の発展の格差が大きい。アラビア語のタイポグラフィが栄えるには、過去のカリグラフィと決別しなければならない。(p. 17)
タイポグラフィは知識と思想の伝達に重要な役割を果たす。アラビアの国々が21世紀に、新しいコミュニケーションを発展させるのには、タイポグラファが集まって、新しい技術に見合った文字を形成し、進歩させる責任がある。(p. 17)
Histrical Timelines(歴史)
手書き
7世紀に二つの都市がアラビア文字のカリグラフィに影響を与えた。(p. 28)
- Hira: Ma'il, Mashq, Naskhの3つのスタイルを作った。Naskhはその後の筆記体(Cursive)の祖先となった。
- Kufa: Kufiスタイルを作った。Kufiは、その後長期に渡り、手書きに大きな影響があった。
アラビア語手書きスタイルの5つの分類。(pp. 29–41)
- Archaic(古体): Ma'il, Mashq, Old Naskh, Old Kufi
- Kufi: オリジナルのKufiは、当時の最も洗練された文字。その後、Eastern Kufi, Quarmatian Kufi などに発展した。最近、徐々に復活している。
- Maghrebi: 西アラブで発展。Western Kufi, Fasi Kufi(モロッコ), Andalusian Kufi, Sudani Kufi
- Cursive: Caliph Abdelmalek (705–715) が最初に公式文書に使ったと言われる。Thuluth, Naskh, Muhaqqaq, Rayhani, Tawqii, Ruqaa
- non-Arab: トルコ風 Diwani、ペルシャ風 Taaliq, Nastaaliq, Shikasteh、インド風 Behari、中国風 Sini
アラビア語印刷の発展
アラビア語の印刷は、15世紀からヨーロッパで始まったが、中東で始まったのは18世紀 (p. 43)
アラビア文字の改革 (pp. 73–79)
- 1947年— Nasri Khatter (New York). Unified Arabic Type. 文字毎に1つの字形。
- 1958年— Ahmad Lakhdar Ghazal (Morocco). モロッコ政府は採用。
- 1960から1970年初頭— E. B. Plooij (アムステルダム). DecoType Naskhフォントとして復活し、Microsoftのワープロ用ソフト、PageMakerに採用された。
19世紀から20世紀のアラビア語組版と製造 (pp. 79–83)
Linotype, Monotype, Letraset Ready-Set-Go, Postscript
Aspects of Arabic Type (アラビア語タイプの様々な側面)
子音アルファベットで記述するシステム。文章は右から左に書くが、数字は左から右に書く双方向言語。(p. 85)
アルファベット
- 文字の数—lam-alefリガチャとhamzaを除いてアルファベットは28文字 (p. 86)
- 判別記号(diacritics)—18種類の単独形基本文字の上と下に1個から3個の点を付加する。非アラビア言語のための追加判別点とミニチュア文字もある。(pp. 88–87)
- 音声化(vocalization)記号—テキストの中で文字の上か下に付けて短母音、二重母音、子音の声門閉鎖音化を示す。音声化記号は古代シリア語から導入され変遷した。
現在は、Tashkilとして知られる。7つの基本形に基づく11種類がある: Fathah, Kasrah, Tanwin Fathah, Tanwin Kasrah, Dammah, Tanwin Dammah, Sukun, Shaddah, Hamza, Maddah, Waslah.
(pp. 89–91)
- 文字の形—大文字と小文字の区別はない。28文字の中で22個は、4つの字形(先頭、中間、最後、単独)をもち、6個は2種類の字形をもつ。このほかAleph Maqsura, Teh Marbutaという変形がある。Hamzaは単独形では大きくなる。
Lam-Alephリガチャという重要なリガチャがある。28(29文字)のアルファベットに対して130のグリフが必要。 (pp. 99–100)
アラビア文字はx-heightがない。主要な文字は上の方向はオープンな形をもつ。文字の識別は形ではなく高さで行う。OCRソフトウエアを開発するのはほとんど不可能である。 (p. 101)
句読点
アラビア語の句読点の形状は、ラテン文字の鏡像である。主にフランス語の用法に近い。 (p. 104)
- 文の終わりを示す—ピリオド、疑問符、感嘆符、省略記号。
- 文の論理的区切りを示す—コロン、コンマ(Dammahとの混同を避けるため上にはねる、通常のコンマはDecimal Commaと言い数値の区切りとして使う)、セミコロン(上にはねる)、ダッシュ。
- 文のしるし—角括弧、引用符、二重小角括弧(Guillemets)、Virgule(or, and or, per)
数字
現代アラビア語で使われる数値はインドの数字に由来する。 (p. 111)
アラビア語では欧州と同じように小数点をDecimal Commaで表し、千単位の区切りは空白で表す。 (p. 106)
Type Design(タイプ・デザイン)
アラビア語のフォント・メトリックスは次の数値である。bounding box, baseline, ascender height, descender height, tooth-height, loop-height (p. 182)
付録Type Designer(タイプ・デザイナー)
- Ahmad Humeid
- ParaType
- Agfa Monotype: Microsoft に協力してTahomaフォント・ファミリーを開発 (p. 215)
- Mamoun Sakkal: 新しいKufiフォントを作っている。 (pp. 218–229)
- Linotype Library
- Kris Holmes: Charles Bigelow (Professor of Digital Typography at Stanford University) と共にLucidaフォント・ファミリーを開発。Lucidaフォントは、ギリシャ、キリル、ヘブライを含めてUnicodeに準拠するように拡張されている。(p. 227)
- DecoType: オランダの会社でダイナミック・フォントの概念を開発。Unicodeが定義するアラビア語とアラビア語派生文字の全てを含むNaskhのカスタマイズ版をUnicode標準のマニュアル出版用にUnicodeに寄贈。(p. 231)