2004年10月4
アンテナハウス 小林 徳滋
これは2004年9月16日から18日の3日間フィンランドのKuopioで開催された第2回ヨーロッパ・ワークショップは「MathMLとScientific e-Content」の報告である。
本ワークショップの目的は、コンテンツ・プロバイダや開発者が、MathMLやSVGなどの最新のマークアップ言語のついて意見を交換して、知識を共有すること。および、数学や科学的コンテンツをWebで使用できるようにすることである。
ワークショップの主催者はdMathProjectであり、その上位にあたるEUのレオナルド計画が協賛している。
開催場所はSavonia Polytechnicである。Kuopioは、フィンランドの首都ヘルシンキから400kmほど北へ走った位置にあるフィンランド中部の中心都市であり、Savonia Polytechnicは、単科大学で高校と大学の中間的な位置づけの学校のようだ。同校のJyrki Kajalak先生が中心になって運営していた。
参加者は約40名程度である。参加者の名簿はWebに公開されているがほとんどが欧州各国の大学の先生である。
今回の会議の主催者がdMathProjectになっていることもあり、このプロジェクトの関係者が7人ほど参加したとのことである。dMathプロジェクトについては、18日午後のセッションで紹介があった。
発表内容を大きく分けると(1)MathMLに関する解説・教育、(2)MathMLの関連ツールの紹介、(3)数学の教材作成やWebでの数学教育プロジェクト、eLearningによる数学教育の現状報告についてに分けることができる。
W3CのMathML仕様のエディタの一人であるDavid Carlisle博士による、初心者向けのXSLTスタイルシートの紹介とXSLTMathMLをブラウザで表示するためのUniversal MathML stylesheetスタイルシートの紹介があった。PC教室を使って参加者が実践しながら行った。この様子は、フィンランドのメディアにも取り上げられている。
ツール開発の紹介は、すべてMathML関連である。
オハイオ大学のEitan M. Gurari助教授が開発しているTex4htは、LaTexからハイパーテキストに変換するプログラムである。コンフィギュレーション・ファイルによって、xhtml、MathML、その他を生成できる。
ヘルシンキ工科大学(Helsinki University of Technology )でのデジタル数学教材開発にTeXで作成した数式素材をxhtmlやMathMLへの変換に使用した経験についても報告があった。
ポルトガルのPorto工業大学ではMathMLを音声で読み上げるAudioMathプロジェクトを行っている。
AudioMathはまだ数式の音声読み上げを完全に実装する段階に至っていないが、先行するMathPlayerの音声読み上げと比較して、彼らのプロジェクトの特徴を紹介した。
soft4science社はミュンヘンの会社である。欧州のMathMLのプロジェクトに参加しながら、SciWriter(数式エディタ)、MathML .NET Controlなどの開発を行っている。
アンテナハウスは、現在、開発中のXSL Formatter V3.2用のMathML組版オプションの紹介を行った。
ヘルシンキ大学のMika Seppälä教授による紹介。Mika教授は欧州のOpenMathプロジェクトの中心でもあった。OpenMathは数式の共有化に関する基礎的なプロジェクトであったが、既に完了した。現在は、応用プロジェクトであるWebALT (Web Advanced Learning Technology)やActiveMathを進めている。
WebALTは、多言語の数学教育用のeContentを作るものである。数式コンテンツの表現にはMathMLを使い、実習データベース、自動試験システム、学生の達成度を追跡するシステムなどを備える。教育者は、自分のCCD(Course Content Definitions)を定義して学習コース作成できる。政府の助成をもらって2005年から大掛かりなコンテンツの作成に取り組むようだ。
dMathProjectは、EUのレオナルド計画の一環である。欧州全体で数学のeLearning用のデータベースを構築することにある。
dMathProjectの目的は、数学の再使用可能な式を多数作成し、それを蓄積する環境を構築すること、その数式をWebから利用可能にすることである。
欧州の多数の大学を中心とする教育者が参集している。ソフトウェア会社や出版社もパートナーとされているが、ソフトウェア会社ではミュンヘンのSoft4Science社が参加しているようである。出版社が参加しているかどうかは不明である。