文書の電磁的保存・長期保存について

更新日: 2009/10/29

はじめに

IT社会の進展にともない、民間企業ではほとんどの帳票や書類をコンピュータで電磁的に処理していると思われます。しかし、法令等で保存を義務付けている文書が紙を前提としているものがあるため、折角電磁的に処理しても紙に印刷して保存することが必要なことが多くあります。

2005年(平成17年)4月1日に施行されたe-文書法は、民間企業における文書の電磁的な作成、保存を推進するものと期待されていました。ところが、現実にはこれがほとんど進展していないようです。

このページでは、法令・省令などでPDFを始めとする電子文書の取り扱いがどのように規定されているかを調べて整理し、PDF利用の普及に役立てたいと考えています。

内閣官房

e-文書法

e-文書法は、法令で民間事業者などが作成、閲覧、交付、保存しなければならない文書を、法令が書面(紙)によることを求めていたとしても、電磁的方法によって行うことを認めています。

(1)最初からコンピュータで作成したものと、紙をスキャナで電子化したものの両方が認められる。(2)具体的な対象と方法は、主務官庁の省令の定めにより、となっています。

文書を電磁的方法で取り扱う場合、その方式が問題になります。特に、保存する場合は、保存期間をどうやってクリアするかも問題です。電磁的な文書を長期的に保存する技術は確立していないからです。このため保存期間が長い場合は、特別な配慮が必要と思われます。

金融庁

金融商品取引法

金融商品取引法では、上場企業の有価証券などについて、発行者に発行市場と流通市場での開示を義務付けています。この開示は、金融庁の電子開示システムEDINETを通じて電磁的に行なわれています。一般人もEDINETを通じて見ることができます。但し、これは行政サービスの一環であって、法上の公衆縦覧ではないそうです。EDINETの電磁ファイル形式はHTMLとなっていますが、参考資料としてPDF形式が付加されていることもあります。なお、平成20年4月から開始する事業年度では、公開会社からの財務諸表の提出はXBRL形式となります。

現在、上場企業は有価証券報告書等の開示書類をPDFで各社のWebサイトから公開しています。株主や取引先等へのサービスとしては重要と思います。しかし、この法的な根拠・有効性については分かりません。

総務省関連

行政手続について、各手続の根拠法令において書面で行うこととなっている場合に、書面によることに加えオンラインで行うことも可能とするための特例規定(通則法形式)を定めています。

電子申請は、政府から、オンライン申請用のソフトが提供されていることが多いようですが、電子申請の添付書類には、主務官庁の省令の定めにより、PDFを利用できることがあります。

法務省関連

会社法

法務省は平成7年に商業帳簿の保存は紙でなければならないという商法上の規定はないという見解を出しているそうです(「電子帳簿の実務Q&A」(株)ぎょうせい刊、佐久間 裕幸著)

平成18年5月1日施行された会社法では、定款、株主総会議事録、取締役会議事録、会計帳簿、委員会議事録、清算株式会社の貸借対照表、質権に関する社債原簿、債権者集会議事録、などの主な書類を書面もしくは電磁的記録をもって作成することができるとされています。電磁的記録をもって作成した場合、会社法施行規則により電子署名を施さなければなりません。また、ビューアまたはプリンタで印刷できることが必要となります。

会社法では、創立総会議事録、株主総会議事録、取締役会議事録、監査役会議事録、委員会議事録、債権者集会議事録は、会計帳簿などは10年間決まった場所に備え置く必要があります。

一方、定款、株主名簿、社債原簿は会社が存続する間、備え付けて閲覧を可能としなければなりません。定款は株主総会の決議により随時変更することができます。また株主名簿や社債原簿は随時変更になります。そこで、これらの書類を変更したときは、最新版を作成し、それに電子署名をして備え付けることになるでしょう。

会社法と内部統制

会社法第362条4項6号で、大会社の取締役会は「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」の決定が義務付けられています。

これは、会社法施行規則第100条で、次の5項目とされています。

  • 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

委員会設置会社の取締役会は、会社法第416条1項1号ホおよび会社法施行規則第百十二条2項で、執行役について、上述の取締役と同様な項目を決めることが義務付けられています。

商業登記法

商業登記法では、登記簿とは、「商法、会社法その他の法律の規定により登記すべき事項が記録される帳簿であつて、磁気ディスクをもつて調製するものをいう」されており、登記簿は電子化されています。

商業登記の申請は、行政手続オンライン化法により電子的に行うことができます。電子申請のプログラムは、無償で提供されています。電子申請では添付文書に電磁的記録を使用できます。PDFも利用可能です。

財務省関連

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法では、第4条で次の3種類の情報について規定しています。

取引に関係する書類については、見積書の作成・送付、受注、出荷という取引の流れをコンピュータで行えば、電子取引に相当し、その部分については、電子帳簿保存法により、電磁的保存が義務付けられます。この場合、紙の保存が必要かどうかは不明です。なお、電子帳簿保存法第10条の電磁取引情報保存は、平成17年の改訂で、違反すると青色申告取消の罰則が追加されました。ご注意ください。

電子取引になっていない、書面で授受したり、書面で作成した取引に関する書類、社内で作成する会計上の書類などは、e-文書法の適用対象として、電磁保存が認められることが期待されます。そこで平成17年のe-文書法の施行に合わせて、第4条3号でスキャナが追加になりました。

e-文書法に伴って、新たにスキャナ保存が認められたのは書類のみであり、帳簿についてはe-文書法に伴う進展はないようです。

法人税法

「例えば、第126条で青色申告法人は財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引等を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。」としています。

そして、法人税法施行規則第59条で、次のような帳簿書類を7年間保存しなければならないとしています。

  1. 仕訳帳、総勘定元帳、その他資産・負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
  2. 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
  3. 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

所得税法

消費税法

消費税法では、第30条で課税仕入れに関わる消費税を控除することができることを定めています。同条7項で、このためには、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等の保存が必要とされており、それが保存されていない場合は、課税仕入れの消費税を控除することができません。

帳簿とは自社で作成する会計帳簿で、仕入れの相手方の名称、仕入れを行つた年月日、仕入れに係る資産又は役務の内容仕入れに係る支払対価の額を記載したもの(同条第8項)。

請求書等とは、次の3種類となります(同条第9項)。

  1. 相手先が発行した請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもの
    1. 書類の作成者の氏名又は名称
    2. 課税資産の譲渡等を行つた年月日
    3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
    4. 課税資産の譲渡等の対価の額
    5. 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
  2. 自社で作成した、仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもので、記載事項について相手方の確認を受けたもの。
    1. 書類の作成者の氏名又は名称
    2. 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
    3. 課税仕入れを行つた年月日
    4. 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
    5. 第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額
  3. 輸入許可証など

電子帳簿保存法第10条では、電子取引を行なった場合の、取引関係書類の保存が義務付けられています。しかし、さらに同法第11条2項を見ますと、「前条(10条)の規定により保存が行われている電磁的記録に対する他の国税に関する法律の規定の適用については、当該電磁的記録を国税関係書類以外の書類とみなす。」とあります。このことからPDFで作成した帳簿・請求書等は、電子帳簿保存法第4条で税務署長の許可がない限り、消費税法上の書類としては扱われないと考えられます。

【補足】上記については、実際に東京国税局からそのような解釈を示されたという大手SI会社担当者の証言があります。ところが、一方、電子取引で受け取った請求書は、「消費税法基本通達第6節11-6-3(請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるときの範囲)の(5)に相当し、仕入れ控除を受けることができる」解釈もあり、これも有力なようです。詳細は後日に整理したいと思います(2008/6/25追記)。

印紙税法

印紙税法は、第2条で「文書」に印紙税を課す。第3条で「文書」の作成者は印紙税を納税する義務がある、としています。しかし、電磁的記録は文書ではありませんので、PDF等電磁的な書類は印紙税の対象にならないとされています。

国土交通省関連

建築士法

建築士法は第二十四条の三(帳簿の備付け等及び図書の保存)で、「建築士事務所の開設者は、国土交通省令で定めるところにより、その建築士事務所の業務に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、これを保存しなければならない。
2  前項に定めるもののほか、建築士事務所の開設者は、国土交通省令で定めるところにより、その建築士事務所の業務に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。」
となっています。

建築士法施行規則を見ますと、1項の帳簿については、「前項各号に掲げる事項が、電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され、必要に応じ当該建築士事務所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、当該記録をもつて法第二十四条の三第一項 に規定する帳簿への記載に代えることができる。」とされています。

2項の図書については、e-文書法とその所管省令「国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」の第四条の適用により、次のいづれかの方法で、電磁的な保存が認められます。

  1. 作成された電磁的記録をファイルにより保存する方法
  2. 書面に記載されている事項をスキャナ(これに準ずる画像読取装置を含む。)により読み取ってできた電磁的記録をファイルにより保存する方法

建築基準法・建築業法

国土交通省令

ガイドライン等

経済産業省

総務省

国土交通省電子納品

関連Webページ

デジタルアーカイブ(長期保存)

施策・機関

アーキテクチャ

メタデータ

マイグレーション

マイグレーションとは、「あるソフト/ハード環境からその他のソフト/ハード環境へ、あるいはコンピュータ・テクノロジーのある世代の技術環境から次の技術環境へ、デジタル素材を一時的に移行するためにデザインされ組織化された一連のタスク」—「電子情報保存に係る調査研究」(平成15年3月国立国会図書館)p. 52

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